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LOVE&PEACE PROJECT 2018インタビュー② アフガニスタン女性の今と自立支援について(JICA久保田さん)
2018.09.11

LOVE&PEACE PROJECT 2018インタビュー② アフガニスタン女性の今と自立支援について(JICA久保田さん)

LOVE AND PEACE PROJECT

JICAアフガニスタン次長の上原さんとのインタビューインタビュー記事はこちら>>)の中で、アフガニスタン女性の現実をお伺いしました。
同じ女性としてもなかなかショッキングなことも多く、アフガニスタンの今を知り、今後の未来を考える上でも避けては通れないことだな、と感じました。
JICAにはスタッフの中で、一時期は現地で活動し、アフガニスタン女性の自立支援を専門で行っている方がいるとお伺いしました。その方に是非、アフガニスタン女性のことをお伺いしたいと思い、インタビューさせていただきました。

JICAの国際協力専門員の久保田真紀子さんです。2003年から2008年にかけて、アフガニスタンの女性支援事業に携わっておられました。2014年からは、アフガニスタンの女性警察官に対する支援にも関わっていらっしゃいます。


MAKORI はじめまして。スタッフのMAKORIです。この度は、お忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます。私がアフガニスタン女性の現状を知ったのは、上原さんに教えていただいたJICAのプロジェクトからでした。プロジェクトについてはもちろんですが、何よりも女性が置かれている現実があまりにもショッキングすぎて、絶句してしまいました。
JICAのプロジェクト「なんとかしなきゃ!プロジェクト」はこちら>>

当たり前のことなんですが、これは”事実”なんですよね…。

JICA国際協力専門員 久保田真紀子さん(以下、久保田) はい、そうなんです。
アフガニスタンでは、タリバン政権の崩壊後、少しずつ復興と開発が進められてきていますが、女性たちは依然として厳しい状況に置かれています。

アフガニスタンには、「パルダ(現地の言葉で「カーテン」という意味)」と呼ばれる男女隔離の考え方が今も根強く残っています。ある一定の年齢になると、女性たちは家族関係にある男性以外との接触を禁じられ、家族によっては外出さえも禁じられることがあります。

また、基本的に女性は男性に従属する存在であり、女性は男性の「良き妻」として、また子どもたちの「良き母」としてふるまい、家事や家族の世話を行うことが大事であるとも考えられています。こうした中、女性の教育や健康の改善は常に後回しにされ、女性たちは働いて経済力をもつこともままなりません。裕福な夫や家族がいればまだ生活はできますが、夫に先立たれたり、捨てられたり、支援してくれる家族がいないと、女性たちはどんどん貧困に追い込まれていきます。

MAKORI イスラム教の教えもあって、女性が前に出にくいということは知っていましたが、出にくいだけじゃなく、「男性に従属するもの」という考えだったなんて…。
タリバン政権崩壊後、女性の就学が許されていると聞いていますが現状はどうなのでしょうか?

久保田 現在でも、アフガニスタンの女性の7割が読み書きできないと言われています。タリバン政権時代は、女性の教育が完全に禁止されたため、女性たちは学校に行くことさえできませんでした。現在は国際社会による支援もあり、女の子たちは学校に通えるようになっています。初等教育の就学率も41%まで増加しています。また、首都のカブールでは、大学に進学する女性も増えてきており、大学における女子学生の数は全体の2割を超えるようにもなってきました。でも、農村や地方に住む女性たちの進学率はまだまだ低いのが現状です。

先ほども申し上げましたが、アフガニスタンの女の子たちは、10歳を過ぎる頃には「結婚適齢期にある年頃の女性」としてみなされるようになるため、結婚前に家族以外の男性と接触することを避けるために、思春期になると家族が外出を制限したり、学校を退学させてしまうのです。 女の子は教育を受けるべきではないという考えをもつ人もいることから、学校に通う女の子たちが通学途中で危険な目にあったりする事件も多々あるため、家族が心配して、娘を学校に行かせないというケースもあります。

MAKORI そうなんですね。思っていた以上に特に女性の識字率が低く、大学への進学率も高くありませんでした。都市部はともかく、地方の考え方はなかなか根深そうですね。

女性の就学以外では、どのような問題があるのでしょうか?

久保田 多くの女性たちは自分の結婚や出産に関しても自分で決めることができません。まだまだ日本では考えられないような現実があります。

アフガニスタンでは、16歳以上を女性の結婚可能な年齢と定めています。しかし、地方部では、実際には女性の6割が16歳以前の結婚を強いられているとも言われています。初潮を迎える前の女の子が、時には50歳以上も年の離れた男性と結婚させられるといった「若年結婚」の事例も後をたちません。年の離れた男性と幼くして結婚させられ、14歳で子どもを出産した女性が、その後、高齢で寝たきりになった夫と子どもを養うために、外に働きに出ようとしたけれど、教育もなく、幼い子供を抱えたまま働ける場所もないため、結局は施しにすがって生きていくしかなくなったというような話もたくさんあります。

また、アフガニスタンでは、男の子を産むことが女性の大事な役割とされているため、息子を生むまで、あるいは多くの息子をつくるまで女性は連続した妊娠と出産を続けるのが一般的です。若年結婚によって体が成熟する前に妊娠出産を経験することも多い中、妊娠や出産が原因で多くの女性たちが命を落としているという現実もあります。

MAKORI そうなんですか!法律があるのに…。

久保田 また、女性に対する暴力も深刻な問題となっています。DVや性暴力の被害を受けている女性たちがとても多いのですが、アフガニスタンの女性はこうした被害を受けてもなかなか、周りに相談したり、被害を訴えたりすることができません。家族や親せきに相談しても、女性の方に落ち度があったと見なされて、被害を受けた女性の方が家族からつまはじきにされ、「家の恥」だとして、家族や親せきに殺害されてしまうこともあるからです。

また、たとえ勇気をもって警察に訴えても、被害の訴えを受けた警察が、「問題解決」を地域の有力者に委ねてしまい、結果として、犯罪者と被害女性とを結婚させることで「問題解決」するといったケースも多いんです。

DVや暴力などに我慢できず、家から逃げだした女性が、逃げる途中で立ち寄った友人や親せきの家などに男性がいた場合、そのことを理由にして、「妻が不貞を働いた」と夫や家族が訴えて、女性を罪人にしてしまうといった事例もたくさんあります。実際、現在刑務所にいる女性の半数は上記のような理由で収監されているとも言われています。

MAKORI …絶句…

アフガニスタンがイスラム教であるということは変わっていないと思いますが、昔からこのような環境だったのでしょうか?

久保田 タリバン政権は女性の教育を禁じるなど、女性の人権を無視し、女性たちを抑圧してきました。他方、イスラム原理主義に基づいて厳しく市民を管理して統制していたタリバン政権下では、女性に対するものも含めて、一般犯罪は少なかったと言われています。
また、タリバン政権以前の1970年代は、ソ連の影響を受けて、女性がミニスカートなど履けるような時代もあったと言われています。

MAKORI そんな時代があったんですね!
タリバン政権崩壊後、少しずつ近代化に向けてルールは整えられているが、なかなか慣習が追いついてこないという感じでしょうか。タリバン政権ほどの統制もない中、犯罪が起こってしまっているということですね。

久保田 タリバン政権の崩壊以降、アフガニスタンでも女性の教育や健康、生活の向上に向けた取り組みは少しずつ進められてきています。新しい憲法では女性と男性の平等も謳われています。そして、2009年には女性に対する暴力を罰することを規定した法律も制定されました。DVや性暴力は犯罪であり、加害者は罰せられなくてはならないと、日本の私たちにとっては当たり前であることが、アフガニスタンでもやっと法律で明文化されたんです。

こうした中で、近年では「女性警察官の果たす役割の重要性」についても認識され、その採用が促進されてきています。アフガニスタンでは、男女隔離の考えや社会的な規範から、暴力の被害を受けた女性や女の子たちが、男性警察官に被害の相談をしたり、実態を報告したりすることは難しいのですが、こうした女性被害者を適切に保護し、暴力犯罪を処罰していくためにも女性警察官たちが大きな役割を果たすことが期待されています

また、地域の平和と安全を守るためにも女性警察官果は重要な存在です。アフガニスタンでは、犯罪捜査の際でも、女性住民がいる家に男性警察官は勝手に入れません。でも、女性警察官が一緒にいれば、家に入って家宅捜査もできるし、女性住民からも情報収集できるので、犯罪捜査や予防に女性警察官は大きな役割を果たすのです。現在は約3000人の女性警察官たちが活躍しています。

しかし、女性が警察官として働くことに対する偏見や差別が地域の中にまだまだ根深いので、人材確保が難しいとも言われています。実際に、現在警察官として働いている女性たちも、地域住民や男性警察官たちから中傷や嫌がらせ、性暴力やセクシャル・ハラスメントの被害を受けることも多く、時には命の危険にさらされる事案も多数発生しています。

MAKORI どのような女性が警察官になっているのでしょうか?

久保田 2010年以降、採用されているのは、高校卒業の資格をもつ女性たちですが、実際には短期大学や大学を卒業している女性たちもいます。7割が読み書きできない女性たちであることを考えると、彼女たちは国内でも教育レベルは高い女性たちだと言えます。

一方、女性たちの多くが中流や貧困世帯の娘たちです。お兄さんやお父さんが日雇い労働をして働いている家の娘たちも多くいます。中には小学校のころから自分が働いて家族を養ってきたという女性もいます。

女性たちが、警察官という仕事を志した動機は多様ですが、単に貧困による経済的な動機に留まらず、弁護士や通訳、医者など、夢見る自分の将来像の実現に向けて、自らの教育費を稼ぎ、学業を継続させたいという動機で警察官という職業を選択してきている女性たちも少なくありません。また、警察官になって、女性たちが安全に活躍できる社会づくりに貢献したいという強い気持ちをもって警察官になった女性たちもたくさんいます。

MAKORI あの漫画>>を読んだときは、逃げるように警察官になった方もいらっしゃいました。もう少し後ろ向きな気持ちもあるのかな、とも思いましたが、警察官になった今はポジティブな気持ちで働き始めているんですね。少し安心しました。

とはいえ、やはりまだまだ偏見などがあったりもするんですよね…。

久保田 そうですね。女性警察官が外回りの仕事をするのはまだ危険も多いので、省庁や警察署内での事務作業を希望する女性たちが多いです。一方で、現場に出なければ女性を助けることはできないと、男性たちと一緒に地域で被害者の保護や犯罪捜査などの職務に従事したいと強い意志を示す女性たちもいます。

でも、従事する職種に関わらず、警察官という任務に男性と対等な立場で関わっていきたい、男性と同等に自分も社会を牽引していく人間になりたい、という強い気持ちを持っている女性たちがとても多いです。自分の出身地以外の州や地方で勤務することに対しても、前向きな姿勢を示す女性も少なくありません。ただ、これは、自分の出身地で働くよりも誰も自分のことを知らない他の地域で働く方が安全だからという理由もあるようです。自分の家族や住民の中には警察官として働くことに反対している人も多いので、自分のことを誰も知らない地域で働く方が安全だという気持ちがあるようです。そういう話を聞くと、まだまだ女性が警察官として働くことに対する地域の理解は低いことを感じます。

MAKORI なるほど。本当に、知れば知るほど一重には解決できない問題がまだまだありますね。

でも警察官になる以上は、皆さん前向きにお仕事に取り組んでいらっしゃるというのはとてもうれしいです。そのようにどんどん社会に出ていく女性の力で、社会の意識が変わっていくといいなあと思います。

JICAが行っている研修で写真に映る彼女たちの笑顔は、本当に前を向いている笑顔だなあと感じました。現場でも、そして未来でもその笑顔が失われないように、なにかお手伝いできることがあればしていきたいと思います。

久保田さん、リアルなお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
日本の女性にもぜひこの現実と活動のことは知っていただきたいと思いました。

久保田 こちらこそありがとうございました。

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