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Stitch by Stitch – GROWTH –
2020.12.21

Stitch by Stitch – GROWTH –

Stitch by Stitch

こんにちは。
Stitch by Stitchプロジェクトのディレクターであり
刺繍の先生である二宮佐和子です。

今日は、どんな風にしてインドの女性たちと心を通わせ、
今シリーズのリリースまでたどり着いたのかについて
お話ししたいと思います。

Stitch by Stitchプロジェクトが始まった2015年の12月に、初めてインドの村に訪れた時、
歓迎をしてくれたものの、女性たちの瞳の中に
「この人は誰だろう?今から何が始まるのだろう?」と言ったような
戸惑いの色が見えたような気がしました。
それは私自身が緊張していたからでもあるし、
言葉も通じない中で打ち解けられるかしら…という不安があったから
それが女性たちにも伝わっていたのだと思います。

針も糸も持ったことがない人たちもたくさんいたので、
最初はそれこそ手取り足取り、できるだけ同じ目線に立って、
いいと思うところは、Nice! とか Good! とか Cute! とか
なるべくわかりやすい言葉で
ジェスチャーを交えながら、思いっきり気持ちを伝えるよう努力しました。
そうすると少しずつ、はにかんだ、少し控えめな笑顔がこぼれるようになってきて
私も嬉しくなったのを覚えています。

女の子同士って不思議なもので、
笑顔を交わし合っただけでなんだか許されているような気持ちになるんですね。
はにかんだ笑顔は次第に人懐っこい笑顔に変化していきました。

それから1年に一度、インドを訪れ直接指導し、
日本にいる間はネットを介して、刺繍の指導を続け、
お手紙を書いたり、女の子たちの絵を描いて送ったりと
ずっとやりとりを続けていました。

2年目、3年目と訪問の回数を重ねるうちに、
休み時間に、女の子何人かが「チャロチャロ」と言って私の手を引いて
自分たちのおうちに連れて行ってくれたりおばあさんを紹介してくれたり、
なんだかわからないけどみんなで丸くなって
ただただニコニコしたり、歌を歌ってくれたり。
家族の名前を教えて、と言ってきたり。
だんだん距離が近づいているのを感じました。

刺繍自体も随分と上達した5年目のテーマは「Eros – エロス -」
女性の内なる魅力を引き出す、内面的な世界に触れるためのテーマと捉え、
絵柄をデザインしました。
「エロス」という言葉は人によって様々なイメージがあると思うので
私の思うところのエロスが、彼女たちに伝わるのか、
またもや不安がありましたが
私の言葉を丁寧に通訳してもらい、デザインを見せながら、
声の抑揚をつけながらみんなに説明すると、
彼女たちは少し恥ずかしそうに下を向いたり、
隣の子と顔を見合わせて微笑みあったり、
クスクス笑いながらも大きく頷いていたりして、
ちゃんと心に届いていることを感じました。


尖らせるところ、丸みを帯びさせるところ、あえてラフに刺すところ、
少し意識すれば細かい表現ができるほどの技術が彼女たちにはある
という信頼もあったので、できるだけ細部までこだわって
何度もやりとりを繰り返しながら、理想の形に近づけていきました。

本来は今年の春に発売する予定で取り組んでいた
この「EROS」シリーズも、未曾有のコロナ禍において
物流がストップしたり、インドがロックダウンするなどの事態が起こり、
現地とのやり取りが思い通りに進まず、
遠く離れている人のことが見えない中で、インドのみんなはどうしているだろうか…と
不安に駆られることもありました。
ものは送れないけれど、今までやっていたのと同じように、
私たちにはネット環境がある。
とにかく、手を動かすことをやめないで欲しい…、
そして、手を動かして作ることが自分自身を救うということを私も実感していたので、
刺繍する図案を送ることにしました。
彼女たちも手作りのマスクを付けていることがわかったので
そのマスクに刺繍をして、少しでも華やかな気持ちになれたらいいなと思い
マスク用の図案を用意したのですが、
マスクの目安として引いていたラインまで刺繍してあって、
マスク柄のマスクになっていた写真を見た時、かなり癒されました。笑

そんな風に、私たちのコミュニケーションは基本的にスムーズじゃないし
3回くらい言い直さないと伝わらないのだけど、
でも伝えようとする気持ち、受け取ろうとする気持ちがあれば
通じるんですよね、少なくとも70%くらいは…笑
不便になればなるほど、心の結びつきは強くなるのだと思います。
会えなければ会えないほど、会いたくなる、恋愛と一緒ですね。

EROSシリーズの図案を抱えてインドへ訪れてからちょうど1年、
今年はインドへ行けないけれど、1年をかけてじっくり進めてきたこのシリーズを
ようやくお届けできるようになりました。
丁寧な針の運び、EROSのコンセプトに加えて、
この1年間の不安や揺らぎや希望、様々な思いも含まれているかもしれません。
ぜひ身に付けてもらえたら嬉しいです。