LOVE PEACE PIECE 特別対談 gallery deux poissons ディレクター 森さん
てとひとて Masterpiecefull!
LOVE,PEACE,PIECEのプラットフォームとなったhaco!。想いに共鳴して踏み出してくれたのはデザイン性や手工芸性を重視したジュエリーブランドをサポートする企画運営チーム“New Jewelry”代表で、日本で数少ないジュエリー専門のギャラリー“gallery deux poissons”を運営されている森さんです。haco!となぜ手を組むの? 一緒にスタートする取り組みとは?その事について、森さんと、haco!スタッフBOSSの対談をお送りいたします。




――本日はよろしくおねがいいたします。
まずは、森さんが普段取り組まれているお仕事・活動についてご紹介ください。
“gallery deux poissons(ギャラリー ドゥ ポワソン)”という、東京都・恵比寿のギャラリーでジュエリーを扱っています。ここは2003年にオープンして、来年でちょうど20周年。
展示する作家さんやデザイナーは日本だけに限らず、ヨーロッパ・オランダ・ドイツ・スペイン・オーストラリア・ニュージーランド…など世界中の方々のジュエリーを取り扱っています。
またギャラリーだけでなく、販売場所や展示会の企画などその時々によってぴったりのジュエリー作品をご紹介することも行っています。

gallery deux poissonsディレクター
森 知彦
森 知彦 / Tomohiko Mori
gallery deux poissons Director / New Jewelry LLC. Co-CEO
1978年大阪生まれ。1996年エスモード大阪入学。在学中より若手のファッションブランドを扱う「2 POISSONS」(大阪)のバイヤーを務め、1998年拠点を東京に移し、2003年 ジュエリーギャラリー「gallery deux poissons」を立ち上げる。2010年にジュエリーの展示販売会「New Jewelry」を創設。その後もジュエリー専門メディアJEWELRY JOURNALなど、New Jewelry LLC.が推進する事業のディレクションを行う。
――ジュエリーの展示とは、普段どのようなことをされているんですか?
まず、作家の作品や商品をお客さまに見せるまでの準備ですね。
写真を撮ったり商品のコピーを考えてお客さまへ魅力が伝わるようにSNSで告知をしています。時には展示する作家さんの相談に乗って、作品と商品を展示する割合や、価格帯、サイズ感などの話をすることもあります。ギャラリーでは、主にコンテンポラリージュエリーというジャンルのものを扱っています。
コンテンポラリージュエリーというジャンルは初めて聞きましたがどんな作品なんですか?
要約すると現代ジュエリーですね。
古典的な技法を現代的な技術で作ったり、クラフト要素を加えたり。たとえばレーザー溶接や合成宝石など…表現に何かしら新しい要素を含めたものという感じです。
社会的な情勢や、戦争・宗教をテーマにしたコンテンポラリージュエリーなんかもあって、時代にその事柄がないと生まれないものもあります。


技術とともに、積み重ねた時代が蓄積したものが反映されている感じでしょうか?
そうですね。バージョンアップしているジュエリー!ですかね(笑)。
対局にあるのはアンティークジュエリーと呼ばれるジャンルですが、ただ、「キレイだな」「面白いな」と感じるという点では変わらないんですよね。過去が悪い・古いではなく新たな価値観です。
――森さんが現在のお仕事を始めようと思われたきっかけはなんだったのでしょうか?
もともとはファッションを扱うセレクトショップでアルバイトをしていて、20歳で上京して、新しいショップの立ち上げに関わったのですがお洋服が全然売れなくて、人気だったのがジュエリーだったんです。
ファッションは好きだけれどトレンドの移り変わりについていけない面もあって、変化の少ないジュエリーの方が取り扱いやすかった。だから、ジュエリーに特化したギャラリーに切り替えました。
あとは、当時出会ったオランダから来たバッグデザイナーが着用していたネックレスがすごく素敵で。話を聞くと、その方の友人が作ったものだったからすぐに連絡先を聞いてオランダに会いにいったんです。そしたら、その方やその方の周りの人が作っているものが、まさに今メインで扱っている“コンテンポラリージュエリー”と呼ばれるものでした。
その当時は『日本は何でもはやくて何でもある場所』だと思っていたけど、コンテンポラリージュエリーは日本にはないものだった。それがすごく面白くて、誰かにも知ってもらいたいと思ったことがきっかけですね。
今やジュエリー業界の主のようになっているのに!
実はファッションからジュエリー業界に転換したなんて経緯があったんですね!

――そういったきっかけから、20年間も継続できている理由は何なのでしょうか?
たくさんの作家さんの想いをまとめ押し上げていくのは容易いことではないですよね。
ジュエリーを作っている方それぞれに価値観が違うんですよね。
その、それぞれの価値観を世の中に知ってもらいたいという想いと、知った時に世の中がどう思うんだろうという好奇心ですね。
新しい技法や新しい表現、まだそこに無い物を提案するときは売れるかどうかもわからない。じゃあ見せてみよう、と。やってみたら結果がわかるから、わからないことはやってみようと。
――すごい!森さんのシュッとした印象からは想像できなかったガッツのある一面を知りました(笑)。もともとの性格がそうなんですか?
そうですね、性格なんだと思います。もともと考えて動くよりも、疑問から原動力がわいてくる。
自分の「これ面白いんじゃない?」という発想には答えがないので、答えを導き出すために人に見せている感じかな。そうして続いていっている。
それに、作家さんも止まっていないんです。
うちのギャラリーのスケジュールは大体2〜3年おきに同じ作家さんで個展をするんですが、作家さんもずーっと変化があって、次の個展に新しい表現を用意してきてくれる。
そうすると、前回の個展と作っているものが違うから、それを見るのが楽しいんですよ。
しかも作家さんってPR用の写真を撮り終わっても、個展を開催するギリギリまでにも作品を作ってこられる。ギリギリまで作っておられるので、最後の一番面白い部分がPR時には残念ながらお見せできないんですよね。展覧会に出されるのが一番最新なので。でもそれも楽しみです。
本当に、すごく楽しみながらやっていますよ。


――“ジュエリー”と“アクセサリー”の違いはどう捉えたらいいんでしょうか?
人によって解釈は異なると思うんですが、僕は身に着けるものがジュエリー、それ以外の小物全般がアクセサリーだと思っています。
ええ!値段が安い装身具をアクセサリーと呼んでいるイメージがありました!
価格の安い装身具をアクセサリーと呼ぶのは日本だけかもしれませんね。
というのも、日本はジュエリーと呼ばれるものが千何百年間なかった珍しい国なんです。
縄文時代には耳飾りをつけていたけど、江戸時代にはネックレスとか身に着けていないですよね?
着物そのものが装飾美だったこともあるからかジュエリーは身につけなくなったんです。
かんざしや帯どめは機能があるから純粋なジュエリーとはまた異なる道具ですし。
日本はもともと道具を美しくする文化があるじゃないですか。工芸は発達しているけれど、機能のない装飾については一度文化が途絶えたと考えられますよね。
一方で道具や物は時代に合わせて形が変わるけれど、人の体は変わらない。
だから体に着けるジュエリーも形が変わらずに、古代のエジプトやギリシャの紀元前のジュエリーなんかは今でも身に着けられる形状のものが存在している。
ジュエリーの歴史は古くて長いんですよ。
紀元前から変わらないものなんて他にないですよね!
ジュエリーは根源的な人間の欲求に連動しているとしか思えません。
そうですね。ダンスや音楽と一緒で、なくても⽣きていけるけどあると幸せじゃないですか。
なくてもいいものがあるということが文化的ですよね。だから国や時代によって違うというのも面白いんです。


おかげさまで、これまでhaco!サイトでは森さん監修の元“てとひとて”プロジェクトを通して、さまざまな作家さんとお客様のご縁を繋げることができました!
プロジェクトの発端は、haco!がまだカタログだった時代にスタッフミオがフランスの文化やジュエリーと接して、想いのこもったものを身に着けるとか、誰かに作ってもらうって素晴らしい!と思ったことだったよね。
カタログ通販では一点物の取り扱いは難しいと感じつつ、それでも何とかならないかと始めたのがてとひとて。そのときすでに森さんはたくさんの作家さんの想いを束ねていらっしゃって。森さんと一緒ならば実現すると思いプロジェクトが始まりました。
――作る人と使う人をつなぐというのが“てとひとて”のコンセプト。
お膳立てされた売り場ではなく、作り手の思いを直接伝えられる売り場を作りたかったんです。
てとひとての最終目標は、1人1人に専属の作家さんがいる状態。
例えば結婚指輪をつくってもらったり、こどもが生まれた記念の何かを作ってもらったり、人生の特別な瞬間に自分の専属の作家さんが寄り添ってくれるようなパートナーを作っていけたら素敵だと思ったんです。
てとひとてのスタートからは約6年が経ちましたが、ジュエリー業界におられる森さんが感じる課題はありますか?今改めてLOVE PEACE PIECEのプラットフォームになったhaco! でスタートを切るにあたって、何か僕たちができることはないかと!
ある程度売れるようになると人手が足りなくなってしまうことが課題ですね。
“ジュエリー業界”と“ジュエリーブランド”も違っていて、ジュエリーブランドは百貨店の1階に常設店舗を持っているようなところだとすると、対象的に作家物のジュエリーは自分で作って自分で売って自分でPRして…となると、売れれば売れるほどすごく大変。

一人で抱えている部分を一緒に突破できていくことが出来ればいいなと思います。たとえば「ジュエリー作家で食べていきたい」という作家さんにとっての環境づくり。
森さんは作家さんのための場を整えて、想いを間違いなく届けるところをディレクションされているのであればhaco! は1人1人のお客さまたちへその思いを伝える。ただの売り場のひとつになるのではなく、お客様たちへ余すところなく作家さんの想いを紹介したいと思うんです。
使う人が限られた人ではなく、幅広くたくさんの人たちに出会いのきっかけを作り、お客さまがどう楽しんでいるのかを作家さんにも知ってもらいたいですね。
そうですね。そういったことができれば、よりよいものが生まれるのかもしれませんね。
意外と作家さん自身は自分の作品がどんな場所に合っているかわからなくて、ただ、自分が好きなお店だからという希望だけで置く店を選んだりすることもあるんですが、それではうまく回らないこともある。そこは、作家さんの作品の特徴とお店の相性を見極めて提案して、見てもらえるきっかけを増やしていくことが大切で、それも自分の仕事だと思っています。
物主役から人主役になっている時代に、人主役の場所で気持ちが響きあって新しい物が生まれるようなことは絶対にチャレンジしていきたい。
だから、ジュエリー作家さんたちと繋がり合えるこの出会いにはまだまだ可能性を感じるし、haco!は「未来を売る通販」を目指していきたい思いの中でジュエリー作家さんとの話は未来そのもの。
オーダーしたり、オーダーしたものが届いた後の自分を想像してわくわくしたり、時の流れもかけ合わせて物を買うのはすごく豊かですよね。ジュエリーには機能はないけれど、意味はあるじゃない。意味に特化できる物っていうのはすごいですよね。

それでいうと、コロナ禍では作家物のジュエリーの売上は下がらなかったんです。
それは、意味・人の気持ちに寄り添っているものだからかと。身に着けることで癒されるから、社会の情勢が悪くなってもジュエリーの売上にはあまり影響しないんです。
ただ、売れるアイテムに変化はありました。
オンラインミーティングが増えることで顔まわりに着けるピアスやネックレスが売れるのかと思っていたけれど、結果的には違って指輪がよく売れたんです。
ピアスやネックレスは実は人に見られるためにつけていて、人に会わなければ着けないんですよね。でも指輪って人から見られなくても着けることが多くないですか?
誰かのために身に着けるのもとても素敵なことだけれど、自分のための需要がコロナ禍で生まれ、指輪に現れたんだと思います。
――てとひとてのプロジェクトはまだまだ道半ば。未来を作っていこうと誓った今のhaco!だからこそ、いま一度森さんとお会いして進むべき方向を見つめなおすきっかけになりました。
今後は作家さんとお客さまの出会いにより一層力を入れていくことはもちろん、シーズンや気持ちにあわせたお題を設け、作家さんたちに表現していただく企画展なども計画していく予定です。
作家さんも楽しみにしてくれていますし、お題があると作りやすいと思いますね。
企画に対して考えることに喜びや楽しみを感じられると思います。
自分が作りたいものを作っておられる作家さんにとって、お題を提示されることに違和感はないのでしょうか?
もちろんお題の内容によるとは思いますが、ジュエリーってコンセプトやテーマ性があって、それを身に着けることで意思表明がしやすい持ち物だと思うんですよね。
自分たちが着けているジュエリーも、いつ誰にもらったとか、どんな時にどんな気持ちで買ったとか、他のものよりも鮮明に覚えていませんか?
だからこそ、お題=意味のあるものという点でジュエリーとの相性は良いのではと思っています。
過去にも店舗でテーマを掲げて展開したことはあるんですけど、結構ざっくりしているテーマが多くて集まった作家さんの特徴が出にくかった。でも、haco!が提案してくるお題はもっと狭いのかなと期待しています。
ラブアンドピースのように、かなり壮大なテーマかもしれませんよ?(笑)
どうしたら自分ごとに落とせるか、大喜利みたいですね!楽しみです(笑)
――では最後に、共に進んでいく未来で「LOVE」「PEACE」「PIECE」の言葉を森さんならどう捉えられるかお聞かせください。
LOVE
誠実である事
PEACE
想いやりを持つこと
PIECE
生活を豊かにするもの
ありがとうございました。
改めてこれからもよろしくお願いいたします!
これからの森さんとhaco!の展開を楽しみにしていてください!